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【JASSO奨学金】返済相談その1 —「会社を辞めて返済が大変だ」

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今回はJASSO奨学金に関するよくある相談と質問に回答します。

 

【はじめに】

 ここで取り上げられている相談事例は全て架空のものです。しかし、現実にはあり得ない事柄なのかというとまったく反対です。そうした事例があまりにも多いために問題点をいくつか拾い上げ、一般的な形に再構築したものを載せています。

 そうする事のメリットは、ただ単に個人情報を守れるというだけでありません。更なるメリットとして、ここに書かれた相談事例を読むだけでJASSO奨学金がどのような問題を抱えているか知ることができます。この記事では、いま現在返済に困っている人だけでなく、学生や大学生の子どもを持つ親、高校・大学の教職員が見ても分かりやすいように作りました。目を通してもらえば新しい発見や問題点と出会えるに違いありません。

 読んだ感想などを「いいね!」や「シェア」、「ツイート画面」でどんどん発信してもらえると、「本当に情報を必要としている人」にも情報を届けることができるかもしれません。どうかご協力をお願いします。

 

相談例1 「会社を辞めて返済が大変だ」

初めまして。東京都在住のAと申します。

この度は返済のことで相談がありご連絡しました。

私は地元から東京の大学に進学した時にJASSO奨学金を利用しました。

無利子の奨学金で金額は毎月6万4000円でした。卒業後は就職して返せていたものの、職場の労働環境が過酷で3年で退職をしてしまいました。返済が残り260万円ほど残っていますが、今は失業保険や貯蓄を切り崩して生活しているため、返済するだけの余裕がありません。こうした場合、どのようにしたら良いでしょうか。ざっと現状をご説明しただけですが、なにか質問があれば遠慮なくしていただければと思います。どうかご回答のほどよろしくお願いいたします。

 

回答

 ご相談ありがとうございます。ブログ作成者の藤島です。

 Aさんのメールを読ませていただいて、自分なりの意見を書いてみました。

 一つの意見として参考にしていただければと思います。

奨学金は返しづらくなっている】

 今は社員に長時間労働や研修という名の過酷な競争を課すようなところってスゴく多いですよね。2014年には働いても年収が200万円を超えないワーキングプアの層が1100万人を超えたそうです。それなのに社会が進んでいる方向は企業の「ブラック企業」化や、残業代をゼロにする「ホワイトカラーエグゼンプション」導入のように過酷な方へと進んでいて、一般的なサラリーパーソンには状況がどんどん悪くなるばかりです。そうなると奨学金の返済はおろか、生活を成り立たせるのも厳しくなります。

 実は、統計に現れる傾向から見ると、奨学金を返している人の大半はあまり生活に余裕がないようです。というのも、返済者全体の60%に当たる約170万人が年収300万円を下回る水準で生活し、返済をしているのが明らかになっています(※1)。3ヶ月以上の延滞をしている人を見ると、年収300万円以下の人は約8割に上ります。

 本人に返す意思がどれだけあっても、返せない/返すのが辛い状況に置かれているのが、今の奨学金返済者の実態だと考えられます。

 

【返済を休止してはどうでしょうか】

 まずは返済を一旦休止してみませんか。

 いまはAさんの生活を安定させることが大切だと思います。

 そこで「猶予制度」を使ってみてはいかがでしょうか。JASSO奨学金には最長10年間まで返済を猶予できる制度があります。サラリーパーソンだと年収300万円以下の人や、自営業の人でも年収200万円以下の人はこの猶予制度を使うことができるのです。

 ひと月の返済額を半分にする「減額返済制度」という選択肢もあります。しかし、いまはお金を返すよりも、生活が安定するまで返済を休止するのが良いと思います。

 負債をなくせる「免除制度」もあるにはありますが、現在の制度では重度の障害を負ったり、返済者が亡くなった場合でない限り認められることはありません。先生になれば免除がされる制度は廃止されてしまいました。 

  

【返済について話せる仲間を作ろう】

 そうして生活を落ち着かせたら、次に返済について愚痴を言い合える場所を作ることをお勧めします。というのも、奨学金の返済が大変であると知っているのは社会の中でも、まだごく一部に過ぎません。そのため、返済者は相談しようにも相手が見つからず、孤立したり、周囲とだんだん馴染めなくなる恐れがあるからです。

 もしそうなってしまうと、問題は経済的なものだけではなくなります。社会的、心理的に孤立してしまい、うつや精神疾患にかかることさえあり得ます。そんなとき、信頼できる仲間と奨学金の問題点を話せる空間があれば、精神的に大きなプラスになるはずです。

 人によっては、いくら友達でも借金のことを相談するのは難しいという人もいるかもしれません。確かに、お金の話をするのは難しいかもしれませんが(「金を貸してほしいっていう頼みか!?」って思われたりする可能性もありますよね)、初めは深く相談せずに、少しずつできる範囲で友達に相談すればきっと理解してくれるはずです。いまや大学生の二人に一人が奨学金を借りる時代ですから、友達も返済に困っているかもしれません。返済の苦しさを共有できれば、友達との新しい接点が見つかり、より仲が深まるのではないでしょうか。

 

【返済はいつでもできる】

 しばらくは上記の方向でやってみてはどうでしょうか。

 私は「高等教育を受けた者の責任」というのがあると考えています。

 それは「元気に活き活きと毎日を送り、能力を発揮して高等教育を受けた恩恵を社会に還元する」という責任です。

 奨学金の返済はその条件が満たされた上で行なわれることが望ましいはずです。Aさんの人生は返済のためにあるのではなく、自分自身のためにあります。これは奨学金返済生活で前提となる事実です。

 もう一つ大事な事実があります。それはやりようによって、返済はいつからでもできるということです。そう考えると、今はAさんが「元気に、活き活き」となることが何よりも大切なことではないでしょうか。本当に返せなくなった場合の選択肢もありますので、状況が悪くなった場合は遠慮なく連絡ください。

Aさんが今の苦境から抜け出して、元気に生活できることを心より願っています。

 

                            (回答終わり)

 (※1)平成24年度奨学金の延滞者に関する属性調査結果-JASSO

 

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相談・質問を募集しています

当ブログで取り上げて欲しい相談・質問を募集しています。

「こういう場合はどうすればいいの?」

「返済をしていますが、こういう点がおかしいと思います。どう考えますか?」

といった点があれば是非お知らせください。読者の皆さんと一緒に問題を考えたいと思います。

取り上げる際は個人が特定されないよう問題を一般化して掲載します。

皆さんのご協力をお待ちしています。

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