【JASSO奨学金】返済相談その2ー「延滞金は消せますか?」
ー【2015年1月20日 投稿】
ー【2015年1月27日 一部表現を修正】
【はじめに】
ここで取り上げられている相談事例は全て架空のものです。しかし、現実にはあり得ない事柄なのかというとまったく反対です。そうした事例があまりにも多いために問題点をいくつか拾い上げ、一般的な形に再構築したものを載せています。
そうする事のメリットは、ただ単に個人情報を守れるというだけでありません。更なるメリットとして、ここに書かれた相談事例を読むだけでJASSO奨学金がどのような問題を抱えているか知ることができます。この記事では、いま現在返済に困っている人だけでなく、学生や大学生の子どもを持つ親、高校・大学の教職員が見ても分かりやすいように作りました。目を通してもらえば新しい発見や問題点と出会えるに違いありません。
読んだ感想などを「いいね!」や「シェア」、「ツイート画面」でどんどん発信してもらえると、「本当に情報を必要としている人」にも情報を届けることができるかもしれません。どうかご協力をお願いします。
【相談例2 「延滞金は消せますか?」】
はじめまして。Bと申します。
延滞金について質問です。
私はワケあって奨学金を滞納してしまい、延滞金が付いてしまいました。それでもすぐに気がついたので即効で払いました。
が、私のような人が他にいるかネットで調べたら、延滞金だけでウン100万円になっている人もいてびっくりしました。
そもそも延滞金ってなんですか?
そして絶対に返さなくちゃいけないんですか?
【延滞金の知識は必須】
ご質問ありがとうございます。
延滞金についてはこのブログでもアクセス数がもっとも多いテーマの一つで、返済をする上で知ってもらいたいことが沢山あるポイントです。今回の記事では、延滞金とはどういうものなのかや、どんな問題点があるのか、どうやって延滞金と向き合うのが良いかについて書こうと思います。
【延滞金とはペナルティの一つです】
そもそも延滞金とは何かというと、返済をする約束を守れなかったことに対する金銭的ペナルティのことです。別名で、遅延損害金や遅延利息と言われます。
身近な例で言うと、レンタルビデオショップで返却期限を過ぎてしまい、延滞料として何百円か払う必要があるという場面です。奨学金でも同じように、返す約束を果たせなかった場合、今回返すはずだった分のお金に対して年率5%の金銭的なペナルティが課されることになります。
2013年までは10%の延滞利率が一部のJASSO奨学金に課されていました。しかし、延滞金の問題点を指摘する専門家の指摘を受け、2014年に全ての延滞利率が5%に統一されました。本来の奨学金の定義から考えると、まだまだ改善の余地はありますが、利率の引き下げは全ての返済者にとって良いニュースになったに違いありません。
【利息と延滞金は別物です】
気をつけて欲しいのですが、利息と延滞金は別物だ、ということです。
JASSO奨学金には利子がつかない第一種奨学金と、利子が生じる第二種奨学金の二つがあります。どちらを利用している場合であれ、返済日に返済が間に合わなかったら延滞金が発生します。
「自分は無利子の奨学金を借りて学校に通った。無利子は利子が無いということだから延滞金は付かない」というのは誤解ですのでよくよくご注意ください。
【見えるペナルティと見えないペナルティがある】
ところで、延滞利率が5%と聞くと一見問題がなさそうに思えます。確かに、一般的な遅延損害金はは14%〜15%のものが大半で、5%のものは珍しいといえます。むしろ良心的な利率かもしれません。
ところが実をいうと、5%の延滞利率を目に「見えるペナルティ」すれば、もう一つ目には「見えないペナルティ」があります。後者のペナルティこそ様々な問題を生む大きな要因なのです。
ここでは問題点を2つ指摘するだけにとどめます。
一つ目は延滞金が発生していると、猶予制度や減額返還制度などの救済制度が使えないことです。2014年にそうした措置が緩和されました。しかし、それまでは「経済的余裕が無くて返済が滞ったのに、延滞金を返さないと猶予制度を使えないと言われた。払う余裕が無いから救済制度を使うはず。これでは本末転倒じゃないか」といった声が全国で上がっていました。今でも基本的な奨学金事務の姿勢としては「延滞金を解消してから他の救済制度を使うように」という方針です。
二つ目は雪だるま式に延滞金が増える事例があることです。原因は返済金の充当順位にあります。つまり、JASSO奨学金は、<延滞金→利息→元本>という順で返済額が充当されるため、一度多額の延滞金がついてしまうと、頑張って返しても<延滞金ー利息>の部分ばかり返済していて元金が一向に減らない。そういう例があることです。
その他にも延滞金が奨学金の原資に使われていないなど制度的、倫理的な問題を抱えています。
【延滞金の免除・減免を認められる可能性は限りなく低いです】
一度ついてしまった延滞金を免除・減免する制度はあるにはあります。
しかし、それを利用できるのはごく限られた場合のみです。例えば、本人が死亡してしまったり、重度の障害を負ってしまったり、という場合です。
JASSO奨学金には「延滞金の減免に関する施行細則」というものがあります。詳しいことはこの施行細則にあるので、興味のある方は下のURLからご覧ください。
http://www.jasso.go.jp/jigyoukeikaku/documents/saisoku_17_05.pdf
【厄介な「真にやむを得ない事由」という表現】
施行細則にある通り、減免が認められるには「真にやむを得ない事由」があるとJASSOに認められる必要があります。そして、「真にやむを得ない事由」の解釈は極度に限定されているのが現状です。
例えば、こんな例があります。脳に障害を負って半身不随で寝たきりになった返済者の例です。ある日、本人による返済するのは難しいと考えた家族が、医師の診断書をつけて減免の申請をしました。ところが、JASSO側の医師が診断書を見て「労働可能」と判断をしたのです。もちろん、減免は認められませんでした。このケースは『日本の奨学金はこれでいいのか』という本の中で奨学金の問題に詳しい弁護士は報告しています。その後、弁護士が付き添うことでなんとか減免を認められたようですが、これだけ返済不能が明白なケースでも法律家の助力が必要なほどです。一般の人が利用するにはもっと大変なのではないでしょうか。
延滞金だけじゃなく、普通の返済にしても、現在のJASSO奨学金は免除・減免の道は限りなく狭められています。自己破産をする以外には返さなくてはいけない制度になっていると言えるでしょう。
【目を閉じて「延滞金=絶対避ける」と10回念じてください】
なぜ延滞金は様々な問題の要因となっているのか。
それには制度な問題だけでなく、社会政策・経済的な背景もあります。今回は立ち入れませんが、いずれ奨学金の原資となっている財政投融資や民間資金の事にも触れたいと思います。
では、延滞金に対して、私たちはどのように向き合えばいいのでしょうか。
私は奨学金の返済に関する感覚を日頃から磨くのが良いと考えています。
例えば、Yahoo!知恵袋には「奨学金」と入力すると約8万件、「奨学金 返済」と入力すると約18000件の相談がでてきます。
相談の中には返済に関する切実な相談や、的確な回答があります。
時間がある時にこれら相談を見て、日頃から返済に対する心の準備を行ないましょう。そうすれば、たとえ滞納をしても、あわてずに適切な判断ができるはずです。
しかし、ここで大事な注意点があります。それは、自己責任論や恨み節に引っ張られすぎないことです。Yahoo!知恵袋を読むと、ただ相手を非難するだけだったり、貧しい家庭に生まれた人を差別しているだけの発言をしている人が数多くいます。そうしたイライラした文章を読んでも少しも役に立ちません。Yahoo!知恵袋を観察するのは、自分の生き残りをかけた情報収集のためだと割り切って、利己的な関心に従い、使えない情報と使える情報をはっきり分けましょう。
最後に、延滞金は付いてしまうと「百害あって一利無し」です。
目をつぶり「延滞金は絶対避ける!」と心の中で10回念じてください。
そうすることであなたの中の延滞金に対する耐性が培われます。
もしそれでも延滞金が付いてしまったり、いま発生している人は、このブログに相談を寄せたり、近くの無料法律相談で奨学金のことに詳しい人を紹介してもらいもらいましょう。対策を練れば、必ず解決策は見つかります。
(回答終わり)
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