【JASSO奨学金】返済相談その3 ー「毎月の返済額を減らしたい」
ー【2015年2月3日 投稿】
【はじめに】
ここで取り上げられている相談事例は全て架空のものです。しかし、現実にはあり得ない事柄なのかというとまったく反対です。そうした事例があまりにも多いために問題点をいくつか拾い上げ、一般的な形に再構築したものを載せています。
そうする事のメリットは、ただ単に個人情報を守れるというだけでありません。更なるメリットとして、ここに書かれた相談事例を読むだけでJASSO奨学金がどのような問題を抱えているか知ることができます。この記事では、いま現在返済に困っている人だけでなく、学生や大学生の子どもを持つ親、高校・大学の教職員が見ても分かりやすいように作りました。目を通してもらえば新しい発見や問題点と出会えるに違いありません。
読んだ感想などを「いいね!」や「シェア」、「ツイート画面」でどんどん発信してもらえると、「本当に情報を必要としている人」にも情報を届けることができるかもしれません。どうかご協力をお願いします。
これは久しぶりに会った実際の友達からの相談でした。
たまたま入った喫茶店で、お互いの近況について話していたら、なにかの拍子で話題がこのブログのことになりました。
「実は自分も奨学金を返しているんだけど、結構苦しいね」
彼は毎月の給料の中から家賃、食費、光熱費、カードや奨学金の返済、その他雑費を除くと、手元残るのはせいぜい1,2万円だと言っていました。
そのあとすぐ次の質問がされました。
「ひと月の返済額をなんとか減らすことってできないの?」
【奨学金の完済は長い道のり】
「奨学金を返すのは思っていたよりも大変」。そうした声はとても多いです。
考えてみれば厄介なことです。何もしなくても毎月1、2万円がお財布から消えて行く。多い人では4万円や5万円が消えていきます。まるでお札に羽根が生えてどこかに飛んでいくかのように。しかもです。それが大学卒業後15年〜20年間続くのです・・・。
【「返済困難予備軍」になっていませんか】
「自分の返済はいったい大丈夫なのだろうか・・・」
そういう不安を抱えている人も多くいるかと思います。
どれだけ収入があれば「返済可能」で、どこからが「返済困難」になるのか。
そうした基準があると便利ですよね。
ではここで、別の業界の例から考えてみましょう。
取り上げるのは住宅ローン業界です。
住宅ローンの業界では安定した返済額を算出するための「返済負担率」というのがあるそうです。おおよそでいうと、年収2〜300万円の人は20数%、400万円以上では40%が目安とされています(参考※1)。
住宅は毎日利用する「生活必需品」という点で奨学金と性格が異なります。そのことを加味すると、奨学金の場合は「返済負担率」をもう少し低く見積もった方がよいかもしれません。
例えば、年収2〜300万円の人は15%、400万円以上の人は20%といった具合です。
この基準線を超えたり、近くにいる人は「返済困難」状態や、「返済困難予備軍」と言っていいでしょう。あなたは大丈夫でしたか?
(参考※1)銀行カードローンは総量規制対象外 | 即日キャッシング広場
【減額返還制度を検討しよう】
実は、奨学金の返済額は変えることが出来ます。
JASSO奨学金の「減額返還制度」という制度です。
これは、年収が300万円以下の場合(自営業は200万円以下)、毎月の返済額を半分にするという制度です。疾病、傷害などを理由とする場合でも利用できます。
条件など細かな点はコチラをご覧ください。猶予制度とほぼ同じ条件が必要です。
【メリット・注意点】
この制度はメリットと注意点がはっきりしています。
まずメリットです。
それは、毎月の返済額を半分にできることです。
返済の負担を大きく減らせるので、無理の無い安定的な生活設定ができます。
「決められた額を返すのは大変だけど、借金をしているのは嫌だから少しずつ返したい」
そうした人には効果テキメンです。
次に注意点です。これは二つあります。
一つは「返済額が減る変わりに、返済期間が延びる」ということです。
つまり、毎月2万円をあと5年で支払う計画があるとします。それを毎月1万円をあと10年で払う計画に変更するのが減額返還制度です(※2)。
返し終わったと勘違いして口座の残高確認が疎かになり延滞金が発生するケースや、子どもが成長して出費がかさみ返済が苦しくなるケースが考えられます。要注意です。
二つ目の注意点は、制度利用後に2回続けて滞納してしまうと、制度が二度と使えなくなってしまうことです。その上、ペナルティとして滞納が発生した時点に遡り(つまり2ヶ月前に遡り)、制度を利用しなかった場合の金額(ひと月分の返済額)が請求されます。制度を使ってなかったことにされるということです。
この点をクリアできるなら、使う価値は多いにあると思います。
もし検討中の方がいたら、周囲の人や支援機構職員と相談の上、是非利用してみてください。
(※2 有利子奨学金で減額返還制度を利用した場合
⇒返済期間が延びても利子の支払額は当初のまま変わらない)
2.確認して欲しい点
減額返還は、毎月返還する割賦金を減額して、返還期間を延長するものです。返還予定総額が減額されるわけではありません。
返還期間が延長されますが、第二種奨学金の利息の総支払額は変更ありません。(支援機構HPより)
【いざとなれば友達に頼る手もある】
返済の負担を減らしたい場合、仲間に手伝ってもらうという手もあります。
「友情にお金を絡めると失敗する」と言われています。
これは一面では真理を突いていると思いますが、それだけが全てではないとも思います。
例えば、ロシアでは「貸した金は返ってこないと思え」というのが当たり前のようです。これは決して「貸したヤツの自己責任で、貸す方が悪い」という意味ではありません。「友達が困っていたら持ってるヤツが助けるのが当然。それで相手に余裕ができたらその時に返してもらえ。しかし期待するな。」と言う意味です。ここには互助的な発想があります。
奨学金は贅沢やギャンブルのために借りたお金ではありません。その社会で最先端の知識を身につけ、社会全体に学業の力を還元する人材を育てるためのお金です。
世のため、人のために借りた奨学金の返済で困っている人がいたら、その人がいることで受益している自分自信も相手を積極的に助ける責任がある。そして万が一自分自身が困った場合は、自分も誰かに助けられる資格がある。
奨学金の返済は互助的な発想と相性がいい。自己責任を超えることができるものなのです。
【仲間を作ろう】
私は奨学金の返済を返済者の自己責任で任すのは不当だと考えています。
債権を発行し民間などから集めた年間1兆3000億円の高等教育予算を、学生ローン制度として運用し、140万人の低所得者層に貸し出して利子までとって動かす日本の高等教育システムは異常です。
そうした現実に負けないためにも、相談者にはよく「仲間を作って支え合ってみよう」とアドバイスをします。
まずは生活が苦しいことの愚痴からでもいいです。悩みや不満を話せる友達を一人でもいいから作ることが大事です。
相手に誠実に接し、返済がする意思があるのに生活が苦しいことが伝われば、相手もあなたの問題に理解を示すはずです。そうなったとき、あなたの肩の荷は少しずつ降ろされていくのではないでしょうか。そのとき、二人の間で「なにか」が変わるはずです。
もちろん、これは相手を騙して連帯保証人にさせてトンズラをここうというのとは別物です。そうした卑劣な行為は言語道断です。
自分の大変さを知ってくれている仲間がいることの金銭的・非金銭的な価値はとても大きなものです。そして相手が困った時は自分もきちんと助ける。互助で奨学金の返済を乗り切ることが大切になってきます。
【絶望しない】
奨学金の完済は15年、20年と長いものです。
一人の努力では乗り切れない問題も出てくるでしょう。
しかし、人の底力は計り知れないものがあるので、その気になれば問題を乗り越えられる環境づくりをすることができます。
様々な手段で負担を軽くすることもできます。
自分の力と周囲の人を信じることで、暗い返済生活の中に光明を見いだすことができるはずです。
絶望せずに、智恵を出し合うことで、生まれによる経済的不利が解消されない、不平等な社会構造を乗り切りましょう。
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相談・質問を募集しています
当ブログで取り上げて欲しい相談・質問を募集しています。
「こういう場合はどうすればいいの?」
「返済をしていますが、こういう点がおかしいと思います。どう考えますか?」
といった点があれば是非お知らせください。読者の皆さんと一緒に問題を考えたいと思います。
取り上げる際は個人が特定されないよう問題を一般化して掲載します。
皆さんのご協力をお待ちしています。
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